一級建築士事務所 栗原健一建築事務所


No.10 2024/3/14  適正な設計料は良質な建物につながる










KenKurihara Mail Magazine No.10
知人の皆様へ 栗原建築事務所からのお知らせです。


 春が近いとの季節の便りが届き始めています。
 寒さに弱い私としては、本格的な春の到来が待ち遠しい限りです。

 今回は、適正な設計料の授受が安全で長持ちする建物に以下に重要かという、少し硬い話をさせていただきます。家を建てようとする方にとっての重要な情報です。

 今年の1月9日に、国交省から2024年告示第8号となる「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準」が施行されました。この基準は概ね5年ごとに見直しが行われるもので、いわゆる設計料に関する基準です。法的な拘束力はなく、われわれ建築士事務所が自らの判断で決められますが、国が基準を出すのは適正な設計料の授受が結局は安全で長持ちする建物の普及につながるからとの判断です。

 設計施工業者が住宅の受注などに際して、設計料を工事費に上乗せして一見設計料を安く見せていることなどという不適切な慣行もあったり、そのような状況から設計事務所も設計料を安くせざるを得ない実態があったりします。

 設計事務所より営業力のある設計施工業者は、かなりの新築住宅を設計・工事監理込みで受注しますが、本来必要な設計作業を十分に行わず、また、設計事務所にかなりの低額で外注したりします。その外注を受けた設計事務所は、直接依頼者に会って要望を聞いたりすることがなく、施工者の都合の良い方法での設計を強いられ、適正な設計が行われないことがままあります。営業力の弱い設計事務所は、事務所の存続のために不本意ながら施工業者の下請けを行うこともあります。

 前回、能登半島地震での建物の被害について触れましたが、築年数が古い建物は別として、ここ2,30年の建築の建物でもしっかりした設計や工事監理が行われずに倒壊した建物がないとは言えないでしょう。今回の地震に限らず倒壊まで行かなくても施工不良によるトラブルは多くあり、私の所属の建築よろず相談会にもそういった案件が結構持ち込まれます。

 これは、以前のメルマガで触れた設計施工業者建築の実体のない工事監理も原因の可能性もあります。施工業者とは利害関係のない建築士に適正な工事監理を依頼することが必須です。
 
 国交省が設計料とその業務内容の基準を定めることは、結局は日本の建物を安全で良質な仕様にしておきたいとうことですから、逆に言えばそのような報酬を得ないでの設計料では、健全な建物の普及に支障があるということになります。もしくは、適正な業務をおこなってもこの基準通りでない報酬だとするならば、その設計事務所に過大な負担を強いているということになります。
 最近の物価高で私自身も「安さ」に惹かれての買い物が日常化していますが、簡単に言えば「設計料に関しては安ければいい」と言うことではないということです。

 なお、この基準に従って簡単に設計料を算定し必要な書類(見積書や契約書)を印刷するエクセルベースのシステム「RESA」は、(一社)日本建築士事務所協会連合会で会員向けに提供していますが、この開発はこの会からの委託により10年以上前から私が行っています。この基準はかなり細かいので今回の新基準に適合する新版開発にも相当の時間が要してますが、ほぼ完成しました。
 この算定基準は従来から同様ですが建物の難易度による加算や複合建築物の場合の加算が事細かく決められています。システムを開発しながら、こんなに細かい設定を必要とし、使いこなす設計事務所がいるのだろうかという疑問も持っています。せっかく、苦労して組み上げたシステムですから、必要とする設計事務所には正しく使い込んでほしいものです。

 今回の改正で興味深いのは戸建て住宅の規模に応じた必要作業量(人・時間表)が5年前から減っている(つまり設計料が安くなっている)ことで、確かに従来の基準では実態に合わないのではないかと感じていましたので、より現実的な報酬になったものだと思います。
 例として100㎡(約30坪)の一般的な木造住宅(告示15類の構造計算を必要としない物)の新基準による設計・工事監理料(確認申請業務や開発申請などのその他業務は含まず)は以下の計算式の通り251万円となります。なお、旧基準では約326万円です
 
 告示略算法による人時間数と経費係数、国交省営繕の提示の人件費単価使用
  設計業務   182人時間×4,000円/人時間×2.1(経費係数)=152万円
  工事監理業務 118人時間×4,000円/人時間×2.1(経費係数)= 99万円  計251万円 
 (なお、当事務所では合理化等により経費係数1.8としていますので、条件によりますが計約200万円程度となります)

 
 告示第8号本文 → https://www.mlit.go.jp/common/001269165.pdf

 新旧告示人時間表の増減差分表
     → https://www.tectoplan.com/PDF/kokuji98-8zougen.pdf







LISTへ戻る 


TOPに戻る